蓮の落胤-創価学会、話そうか

非活動家の学会3世が創価学会、日蓮、公明党等を語ります。

50年前の沖縄選挙と公明党(1968年行政主席選挙に関する米国公文書)

前回、名護市長選について記事にしました。その中で、辺野古基地問題を抱える名護市長選において、20年間公明党が揺れてきたことを簡単に紹介しました。

 

今回は、機密解除された米国公文書に記載されている、1968年当時の沖縄選挙情勢と公明党に関する記録を紹介したいと思います。文章の作成機関はCIA(アメリカ中央情報局)です。

 

CIAというと、謀略・陰謀の実行機関のようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、CIAはアメリカ中央情報局の名前の通り、情報の収集・分析が主な業務です(他の国の機関にも言えますが)。

 

例えば、各国地域の主要新聞・週刊誌の内容を分かり易くまとめたり、学術学会発行の専門誌から価値のありそうな情報をまとめたりと地道な情報収集・解析に取り組んでいます。

 

各国地域の情勢・各分野のトレンドをまとめ、関係者(米国政府機関等)への情報提供に貢献しています。時には特定のトピックに関する特集を組んだりもします(創価学会特集もあります)。

 

因みにですが、私がオンラインで内容を確認出来た、創価学会に関する一番古い米国公文書は、1963年にCIAが作成したものです(いずれ紹介したいと思います)。

 

今回紹介するのは、1968年にCIAが作成した当時の沖縄選挙情勢(1968年に行われた沖縄行政主席選挙)における公明党の影響力と態度を記録した文章です。

 

南ベトナム情勢やインドネシア-フランス関係等、様々な地域・分野に関する内容に混じって、沖縄選挙情勢と公明党のスタンスが報告されています(以下に報告書の目次画像とPDFのリンク先を示します)。

https://www.cia.gov/library/readingroom/docs/CIA-RDP79T00975A012200070001-8.pdf

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短い文章ですので、沖縄の項目全文とその翻訳文を掲載します。

 

Okinawa:

The decision of Japan's Komeito, the political arm of the Buddhist Soka Gakkai, to remain neutral in the Okinawan elections for chief executive in November enhances the prospects of the conservative candidate.

創価学会の政治部門である公明党の、沖縄で11月に行われる行政主席選挙において中立的な立場に留まるという決定は、保守候補(当選)の可能性を高める。

 

Komeito‘s position, announced last week, frees the vote of Okinawan Soka Gakkai members, many of whom are employed by the US military and have favored conservative Okinawa Liberal Democratic Party (OLDP) candidates.

先週発表された公明党の立ち位置は、沖縄創価学会員-その多くは米軍に雇用されており、また沖縄自由民主党の保守候補を支持している(好感を持っている)-に投票の自由を与える。

 

It is unclear, however, whether the Soka Gakkai vote--which the organization claims to be some 80,000--will tip the balance in favor of OLDP candidate Nishime over his leftist opponent.

しかしながら、創価学会の(自由)投票-学会は約8万人と主張する-が沖縄自由民主党候補の西銘に、左派対抗馬を超えて有利に働くかどうかは不透明だ。

 

For its part, the Soka Gakkai leadership in Okinawa has not officially endorsed either candidate.

それ(創価学会の自由投票)に関する限り、沖縄創価学会の指導者は公的にはどちらの候補も支持していない。

 

In view of Soka Gakkai's disciplined control over the voting of its membership and the current prospects for a close contest, such an endorsement could be crucial. 

創価学会の厳格な会員に対する投票管理と最近の(選挙が)接戦であるという見通しを考慮して、上記(公明党の)支持は極めて重要となり得る

 

For the past few months, the Okinawan elections have been a point of contention among Japanese Komeito leaders.

過去数ヵ月間、沖縄の選挙は公明党執行部にとって論点となっている。

 

Some feel that Komeito's failure to support the Okinawan leftist coalition will tarnish Komeito's credentials as an opposition party in Japan, particularly since the Japanese Socialists and Communists are supporting their counterparts in Okinawa.

一部の人々は、公明党が沖縄の左派連合支援を怠れば、(公明党の)日本における野党としての資質に傷をつけるだろうと感じている、とりわけ、日本の社会主義者共産主義者が彼等の沖縄におけるカウンターパート(同志or同類)を支援しているので。

 

When party secretary-general Yano continued, however, during a visit to the Ryukus earlier this month, that the Okinawan Soka Gakkai favored Nishime, Komeito opted for neutrality to avoid alienating its Okinawan affiliate.

しかしながら、矢野公明党書記長が沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)と今月はじめの琉球訪問中に(引き続いて)言った時、公明党は沖縄支部における仲違いを避けるため中立を選んだ。

 

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1968年というと丁度50年前ですが、50年前から公明党が保守陣営に付くかどうかが話題になっていたのですね。

 

1968年におこなわれた行政主席選挙。保守陣営の候補者は西銘順治氏ですが、西銘氏が当選するように、日米両政府が沖縄県民の悲願だった国政選挙への参加を西銘候補の実績として選挙戦に利用しようと画策していたことが、公開された外交文書から判明しています。公明党には何か米国からアプローチがあったのでしょうかね?

 

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矢野絢也公明党書記長(当時)は、「沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)」と発言したみたいですが、公的な場での発言とは考え辛いです(少し調べてみましたが判別つきませんでした)。おそらく、米国サイドにオフレコで伝えたのではないでしょうか。

 

もし公的な場での発言であれば、中々にインパクトのある発言です。1968年の公明党は、日米安保撤回、在日米軍基地撤去が公約でした。保守候補支持をオープンな場で言えば、公明党(東京)が危うい立場になります。

 

「一部の人々は、公明党が沖縄の左派連合支援を怠れば、(公明党の)日本における野党としての資質に傷をつけるだろうと感じている」と公文書内で指摘されている様に、保守系支持を公的に打ち出すのはリスクが大きい時代です。

 

そもそも「沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)」というのは本当ですかね?沖縄創価学会が50年前に保守系候補を推す……というのは考え辛いのですが。「公明党(と信濃町)としては西銘を支持したい」が正確じゃないですか?

 

日米安保撤回、在日米軍基地撤去」を掲げながら「沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)」と発言するあたり、公約とは裏腹に、自民党との連携・与党入りを随分早い時期から模索していたのですかね(既に何人もの方が指摘していますが)。

 

1968年の行政主席選挙に関して、日本政治学会が発行している「年報政治学」という学術誌の中に以下の様な記載があるそうです。

 

“注目を集めたのが公明党の動向だった。同党は当初、「中立堅持」の方針だったが、8月下旬、「本土公明党の本質は野党であり、自民党の西銘支持はありえない」と、反西銘の姿勢を明言した。この後、公明党幹部が沖縄を訪れ、屋良、西銘両候補と個別に会ってこの・面接試験・で公明党の屋良支持が確定的となった。”

 

55年体制の崩壊と沖縄革新県政の行方-『68年体制』の形成と崩壊-」 江上能義

『年報政治学1996・55年体制の崩壊』(日本政治学会編・岩波書店1996.12)

 江上能義「55年体制の崩壊と沖縄革新県政の行方−『68年体制』の形成と崩壊−」

 

 

米国には「沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)」と言っておきながら、最後は革新系候補を推したのでしょうか。今回紹介したCIAの文章が作成されたのが、9月30日。文章中には、「今月はじめの琉球訪問中」とあるので、「沖縄創価学会は西銘を支持した(好意的だった)」発言は9月ですかね。上記論文によれば、公明党が反西銘の姿勢を明言したのが8月下旬。二枚舌、三枚舌は50年来の伝統ですか。

 

この行政主席選挙では、保守系の西銘氏が破れ、革新系の候補が勝利します。公明党(南元町)は保守系支持を米国に伝えながらも、現場の学会員は革新候補に投票したのかもしれません。

 

保守革新が拮抗する時、公明党(創価学会員)の動向が注目される。それは沖縄では特に顕著で、基地問題が絡めば外交問題にもなる。名護市長選の構図は、沖縄政治の縮図と言えるかもしれません。それは50年間ほど続いてきたと。

 

追記2018年8月21日

他の資料と読み比べたところ、沖縄公明党の抱えていた状況はより複雑なものだったと考えるようになりました。以下の記事を参照ください。

 

hasu-no-rakuin.hatenablog.com